映画「さよなら。いつかわかること(grace is gone)」のご紹介

映画「さよなら。いつかわかること(grace is gone)」

映画「さよなら。いつかわかること(grace is gone)」


ジェームズ・C・ストラウス監督により、日本では2008年に公開された作品です。

音楽担当にクリント・イーストウッドが名を連ね、クリント・イーストウッド自身の監督作品以外では、初めての楽曲提供作品となっています。

アメリカで暮らしているのは、ホームセンターで働く父スタンレーと、ハイディ12歳とドーン8歳の年頃の二人の娘、そして遠くイラクの地で陸軍軍曹として赴任している母であり妻のグレイスという、離れ離れの生活を送っている家族がいます。

いつも遠く離れたイラクの地にいる母を想っている娘達は、年頃という事もあり、父とはどことなくぎくしゃくした関係でした。だからといって大きな問題がある訳でもない普通の家族です。

イラクからの母の帰りを待ちわびていましたが、ある朝の来訪者が家族を一変させる事となったのです。

来訪者のために開けたドアの先に立っていたのは、正装に身を包んだ軍人でした。その姿を見てスタンレーは全てを察します。妻が戦地イラクで、その生涯を閉じてしまったのだという事を、待ち続けた妻で母グレイスはもう帰ってこないのだという事を。

その夜スタンレーは子供達を外食に連れ出しました。グレイスの事を伝えるべきでしたが、母を待ち続けた娘達にどうしても言い出す事ができずにいました。スタンレー自身も気持ちの整理が付かないのは当然の事でしたが、娘達に突然ある提案をするのです。

次女のドーンがずっと行きたがっていた魔法の庭という遊園地に、仕事も学校も休んで3人で行こうと言い出したのです。

8歳のドーンは素直に喜びましたが、13歳の姉は父の素振りに心のどこかで引っかかるものを感じていました。

父と娘の3人の旅がこうして始まりました。グレイスの死をなかなか娘に伝えられないまま、それでも旅の中で父は娘と向き合っていくのです。3人ですごす旅の中で、年頃の娘と父という、少し距離感のあった関係が徐々に歩み寄りを見せていきます

旅の最中では戦争反対の意見や、イラク戦争は失敗だという意見を目の当たりにします。そうした意見もありながら、しかし最愛の妻のグレイスは命をかけて国を守りイラクで死んだのです。様々な意見がある中父もどう伝えるべきか思い悩みながら、長女のハイディも何かを察しながら旅は続きます。

いよいよ目的地が近づきます。目の前にどこまでも広がる海を見つめながら、そこで家族は何を語りあったのか、家族は進んでいくべき道を見つけられるのか…。

戦争と残された家族というものに焦点を当てながら、あまり語られる事の少ない遺族の心の葛藤などを美しく描き出した作品となっています。

見どころは、年頃の娘との関係に少しぎくしゃくしてしまう父親、そんなどこにでもある家族の姿が、戦地での妻であり母の死によって、また新たな形を紡ぎ出していくというおすすめ作品となっています。