イラク戦争に関連した映画作品のご紹介

映画「さよなら。いつかわかること(grace is gone)」

イラク戦争に関連した映画作品のご紹介

■メッセンジャー

オーレン・ムーヴァーマン監督により2009年にアメリカで公開され、日本では2013年に公開された作品です。

主人公のウィルはアメリカ軍に所属しイラク戦争に派兵されていました。

戦地での負傷により祖国へ帰還した彼は、新しい任務に就く事となりましたが、その職務は戦死した兵士が残した家族へ訃報を伝えるメッセンジャーという通告官の役割でした。

仲間とともにメッセンジャーとしての仕事を全うするために、正装に身を包み遺族の元を訪れます。見慣れない車が自宅に近づいてきて、車の中から正装した軍人が出てくる事で遺族はその意味を悟るのです。大切な家族の戦死その事実を前に、遺族の大きな悲しみや怒りを一番に受ける事となるのが、このメッセンジャーの仕事でした。

ウィル自身も戦地で怪我をして心にトラウマを抱えていますが、訃報を伝える相手はその同じ戦地で命を落とした者です。自分は生きて帰る事ができ、目の前の家族は大切な人を戦地で失う。その日々の中で残された家族から一身に感情をぶつけられる立場のウィルは、自身の心もどこかで疲弊してしまうのです。

悲しみと怒り、感情的になった家族から向けられる言葉の刃に、精神的にも辛い日々を送る中でウィルは一人の女性と出会いました。夫を戦地で亡くしたオリビアとの出会いは戦争で心に傷を負ったもの同士、どこかで合い通じるものがあったのです。その出会いの中でウィルもまた、苦しみにもがきながらも前を向き、自らの人生も取り戻してゆくのです。

戦争で傷ついた沢山の人達、心に傷を抱えながら日々を生きている人、そうした人物になかなか焦点が当たる事は少ないものの、戦争は戦地での交戦だけではないのだという事を、まざまざと描いた作品になっています。

見どころはウィルという一人の兵士が、心も体もボロボロになりながら、それでも尚前を向き生きようとする姿にある、おすすめ作品となっています。

■ハート・ロッカー

キャスリン・ビグロー監督により、日本では本国の公開から約8ヶ月の2010年に公開された作品です。

イラクの首都バグダッド郊外、イラク戦争真っ只中という状況の中で、アメリカ軍の危険物処理班・ブラボーチームは路上に仕掛けられた爆発物処理に当たっていました。処理の準備が完了し、隊員が退避を行おうとしたその時突然爆弾が爆発してしまいます。その爆発により隊員が殉職してしまうという痛ましい事件が起きてしまいます。

新たに送り込まれた隊員はウィリアム・ジェームズ軍曹、経験豊富な爆発処理の専門家でした。数々の爆弾を解体した経験を持つ彼でしたが、チームプレイを重視しないスタンドプレーが目立つ事で、チーム内にはどこかぎくしゃくした空気が流れてしまいます。

時には隊員の命綱である防護服を無意味だと脱ぎ捨ててしまう事や、援護役のメンバーからの要請を無視する事などで、他の隊員と取っ組み合いのケンカにまで発展してしまうのです。

常に危険と隣合わせのイラクで、ジェームズも親しくしていた現地の少年が、人間爆弾として加工されていた最中に命を落としたであろう姿を見つけてしまうのです。

手術台に冷たく横たわる少年の腹の中に仕掛けられた爆弾。その解除を試みようとする中で、現地人と見分けがつかないテロリストの姿。常に生と死の間を行き交いながら、それでも尚爆発物処理という任務で誰かを助ける為に、彼らは爆発物に立ち向かうのです。

ハート・ロッカー、それはハートを入れるためのロッカー、棺桶という意味の隠語なのです。

見どころは、戦地で重火器を使用する事だけが戦争でなく、こうした爆発物処理を行う隊員の命がけの任務が、誰かを救っているのだという事をとてもリアルに描いている点にあります。


■アメリカン・スナイパー

クリント・イーストウド監督により、2015年に公開された作品です。

原作はクリス・カイルで、イラク戦争に従軍し出版された自伝:ネイビー・シールズ最強の狙撃手、が原作となっています。

主人公のクリス・カイルは30歳になるまで、生まれ育ったテキサス州で牧場の仕事に携わる一般市民の一人でした。幼い頃から父に狩猟の技術を教えられながら育ちましたが、それはこの地では決して珍しい事ではありませんでした。

転機は1998年にケニアとナイロビの地で起きた、アメリカ大使館連続爆破事件でした。報道でその事件を知ったクリスは自分が国に貢献できる事はないかとの思いから、アメリカ海軍への入隊を決意するのです。その中でめきめきと頭角を表した事で、海軍の中でも最優秀隊員が集まる事で知られる、海軍特殊部隊ネイビーシールズへの入隊が決定します。

過酷な訓練でしたが仕事ではその射撃の腕前が認められ、私生活では恋人のタヤとの幸せな生活と、充実した日々を送っていました。

そんな日々の中でアメリカ同時多発テロが起こったことで、クリスはイラク戦争での戦地の招集がかかったのです。戦地では狙撃兵として、多くの戦果を残した事で伝説の人物とまで称されて、敵からは悪魔として呼ばれるまでになります。

類まれなるその射撃の能力は、的に懸賞金を掛けられるほどとなりましたが、戦地での経験がクリスの心を蝕んでいくのです。

戦地で命を落とす隊員、心に傷を負う隊員を目の当たりにする事で、心的外傷後ストレス障害を抱えていきます。

戦地から帰るクリスを見るたびに、タヤはその姿に苦しみます。人としてのクリス自身を取り戻して欲しいと願いますが、クリスが戦地での経験を繰り返し帰国するたびに、心がすれ違っていくのを感じていました。 クリスは戦地での大きな敵である、元オリンピック選手の狙撃手を倒すために、それでも尚戦地へ赴くのです。

見どころは戦争がそこに関わる人全ての心を蝕んでしまう事、隊員だけでなく家族もまた共に戦うのだという事を描いてる所にあります。

物語のラストの衝撃をお見逃しのないように、見て頂きたいおすすめの映画となっています。

■ザ・ウォール

ダグ・リーマン監督により、2017年に公開された作品です。

イラク戦争末期の2007年、イラクの砂漠の中にあるパイプライン建設地へと任務の為に、2人の狙撃手が向かいます。

米軍の狙撃手マシューズとアイザックは現場に到着後、状況確認を行うために偵察を行う必要がありました。現地の護衛を行っていたはずの兵士の遺体が転がる中で、兵士の頭に狙撃された痕跡を見つけます。確実に頭に狙いを定めている事で、イラク伝説の狙撃手と言われるジューバではないかと二人は考えていました。

偵察にも24時間近くを要し、兵士の遺体から装備品を集めていたマシューズが撃ち抜かれてしまいます。負傷した仲間を助けようと試みますが、アイザックも負傷してしまった為に仲間の救助ができませんでした。二人の隊員の負傷、そして銃撃によって自身が持っていた装備や水筒にも穴が空き、使い物にならなくなるというピンチを迎えます。

無線が使えない事で本部に現在の状況を伝えられないばかりか、救援も援護も要請する事ができないという、戦地では死をも意味する状況に陥ってしまいました。

二人が当初予想した通り、狙いを定めてこちらを伺っていたのは、イラクの狙撃手ジューバだったのです。

ジューバはイラクの狙撃手で40人近くのアメリカ兵を殺害した(実在の)人物で、その狙撃能力の高さから米軍の中でも恐れられる人物でした。

マシューズの装備の不足から、アイザックはジューバとの対峙を迫られます。狙撃手と狙撃手の緊迫する心理戦の中で、生きる道を探すべくジューバを倒す機会をじっと待つアイザックですが…。

見どころは狙撃手同士の激しい交戦にあり、緊迫した心理戦の様子が刻々と描かれている所にあるおすすめ映画となっています。

■スリー・キングス

デヴィッド・O・ラッセル監督により、2000年に公開された作品です。

ジョージ・クルーニー主演、マーク・ウォールバーグとアイス・キューブが共に出演しています。

激しい戦火が過ぎ去り湾岸戦争休戦協定を迎えたイラク、戦争が集結した事で母国へ帰るべく、新しい日々が始まろうとしていました。主人公のアーチー(ジョージ・クルーニー)は、日常の中に戻りたくないという思いからどことなく、母国へ帰る事に心が沸き立たないでいます。イラク兵捕虜が抵抗を試みますが、彼を鎮圧して身体検査を行ってみると一枚の紙を見つけます。

イラク兵が隠し持っていたのは、何やら地図のようなものを発見しますが、そこにはフセインが残したであろう金のありかを示す地図だったのです。

そこから兵士3人の、黄金を目指した冒険が始まるのですが…。

湾岸戦争への社会的風刺が込められた、コメディ要素の含まれる映画作品となっています。